アナニメン

あながでかいです

香水 瑛人 歌詞

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夜中に いきなりさ 

 

「いつ空いてるの?」ってLINE

君とはもう3年くらい会ってないのにどうしたの

 

「部屋の掃除をしてたら君から借りてたCDが出てきたんだ」

 

あぁ、なるほどね

 

別になにかを期待した訳じゃないけど何となく焦燥感。

 

この焦燥感と今の自分に彼女がいないこと、仕事が上手くいっていなことは関係ない。そう無理やり思い込んで煙草に火をつける。

 

そーいや俺もピアス、返し忘れてたっけな。 丁度いいや、この機会に返しておくか。

 

埃を被った取っ手に手をかけてタンスの引き出しを開ける。鮮やかに光るピアス。隣に綺麗な貝殻が1つ。それと電池の切れたデジカメ。

 

まるで引き出しの中に記憶を閉じ込めていたかのように鮮明にあの頃の記憶が蘇る。

あの頃の僕達はなんでもできる気がしていた。2人で海に行ってはたくさん写真を撮った。

 

カメラの電池が切れていたのは幸いだった。中を見たら胸の奥底に詰め込んだ記憶が溢れ出てしまいそうだから

 

「だいたい予定は合わせられるよ」

 

そうLINEを返してもう一服。

 

3年という月日は長く、俺は変わった。

 

昔からできた人間だった訳では無いが人を傷つけ、泣かせてもなにも感じ取れなくなっていた。

 

床に散らばったストロングの缶が、こっちを見ているような気がした。

 

 

〜当日〜

六本木にの駅前で待ち合わせをした。 お互い、仕事で大きな転勤などもなく、すぐ予定を合わせられたのは幸いだった。彼女に会うのが億劫になる前に過去と決別できる気がした。

 

3年振りに会う彼女は懐かしくもあったが、少し初対面のような印象もあった。

 

「少し歩くとさ、いい雰囲気のバーがあるからちょっと話さない?」

 

彼女が提案する。

 

お互い久しぶりに会うわけだしなんだかんだ嫌いになったわけでもないので着いて行った。

 

 

 

確かにいい店だ

 

俺たちの他に客はいなかった

 

テーブルもあったがカウンター席に着く

 

左隣に彼女が座った。

 

ジンライムで良かったっけ?   すみませんカルーアミルクジンライム

 

甘ったるい酒が好きなのは変わらないな

 

「覚えてたんだ、俺がジンライム好きなの」

 

ロックグラスの中の大きな氷みたいな、キラキラした瞳でこっちを見つめる

 

「まぁね」 

 

得意げに笑った君。

 

あぁ、その顔だ

 

なにもかわってないや

 

別に君を求めてないけど

 

横にいられると思い出す

 

君のドルチェ&ガッバーナ

 

その香水のせいだよ

 

香水のせいなんだよ

 

まだ俺たち以外客はいない

 

お互いが無言になる時間、他の音がしないのが若干苦痛だった

 

今更、君に会ったところで僕はなにを言ったらいいのだろう。

 

可愛くなったね、なんて口先でしか言えない。彼女の可愛いとこは充分すぎるほど知っている。

 

「わりぃ煙草吸うわ」

 

「あ、私もー」

 

そう言って彼女が慣れた手つきで火をつける。

 

俺の驚いた顔を見て君が無邪気な笑顔を見せる。

 

「あれだけ俺に辞めろって言ってたのに急にどうしたよ」

 

「えぇ、? ん、まぁ色々あるんだよ」

 

「あぁそうなん。まぁそんな知りたいわけでもないけど、ちょっと驚いてさ」

 

「まぁ、そうだよねー」

 

少し君の目線が左下に落ちる。

 

別に悲しくない、悲しくないさ。

ただ彼女が変わっただけなんだから

 

「いまなにしてるの?」

不意に彼女が口にする。

 

「別に、ただ社会人やってるよ」

 

仕事についてはあまり話したくはない。

空っぽになって働いている毎日だ

 

「まぁ、楽しくやってるよ」

 

また、嘘をついた。

 

最近の俺は嘘をついて、軽蔑されようと涙ひとつもでないものになっていた。

 

とりわけここ2年くらいの間でなにかがあった訳ではないが、、

 

たわいもない話を吸殻と共に積み重ねていった。

 

 

 

 

 

どれくらい話していただろう。

 

 

 

 

灰皿には役目を終えた吸殻が積み重なっていた。

 

ふと時計を見ると針は23時30分を指していた。

 

「そろそろ帰んねーと」

 

「えー帰っちゃうの?」

 

そう言って君が俺のシャツの袖口を引っ張る。

 

「私、明日も休みなんだよ」

 

ズルい女だ。

 

君がグイッと距離を詰める

 

「もうちょっと話したいなぁ」

 

本当に彼女はずるい。

 

やっぱり、どうしても思い出してしまう

 

何も無くても楽しかった頃に戻りたいとかは思わないけど君のその大きな瞳を見ると思い出す。

 

別に君を求めてないけど

ここ1年くらいはとりわけ思い出すこともなかった。

 

でもどうしても横にいられると思い出す

 

君のドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ

 

香水のせいなんだよ

 

別に君をまた好きになるくらい君は素敵な人だ

 

でももう何もかもを思い出してしまった

 

人参が嫌いなことも

好きな音楽も

君の笑顔も

君のおはようも

君のおやすみも

気丈に見えて寂しがりなとこも

それでいて強がりなとこも

 

全部思い出してしまった。

 

グラスに半分くらい残ったテキーラで全てを心の奥底に流し込み、テーブルに二万円置いて立ち上がる。

 

「わりぃ、明日も仕事だから」

「今日はタクシーで帰りな」

想像以上に声が詰まる

 

「そっか、そうだよね」

「わかった、またね」

 

「じゃあ」

 

またねとは返せなかった

これで本当に終わりだと、思っているから。

 

重苦しい空気と灰皿に立てかけた煙草の煙が交わる

 

その煙の向こうで彼女がどんな顔をしていたのか、見ることができなかった。

 

これで良い。

 

どうせ同じことの繰り返しなんだ

 

結局僕が振られるんだから